読んだ本

2015年12月 4日 (金)

読後感 【京都ぎらい】 井上章一著

読後感 【京都ぎらい】 井上章一著
帯に書かれた副題は「千年の古都のいやらしさ、全部書く」。
 
 
Photo
 
私は興味の対象が京都から奈良にシフトしていますが、刺激的な題名につられて図書館で借りました。
 
簡単にいえば、
井上氏は京都でも右京区の嵯峨で育ったので、京都の中心部(洛中をさす)で生まれ育った人からすれば京都のうちに入らず、したがってバカにされたり差別されたりしてきました。しかし、他の地方の人からは室町も西陣も嵯峨も、山科や宇治でもぜんぶ同じ「京都」ということにされてしまうので、悩みを理解してもらえない、 
というお話。
洛中人の中華思想に対する反感がてんこ盛りに書かれています。
 
この手の話は京都ばかりではなく、東京人がダ埼玉県、と言ったり、三多摩は東京じゃないとか、山手線内じゃないと東京とは言わないとか、他の地方でもいろいろあるでしょうが、京都ではレベルが格段に違うようです。
 
このほかに、京都の僧侶のエグさや、拝観料や古都税の問題。信長はなぜ寺(本能寺)に泊まっていたのか。今の京都があるのは徳川時代の初期に幕府が寺院の改修や新築を積極的に行ったおかげだ。南北朝どちらが正統なのか。銀座は駿府の以前に京都にもあった。明治維新は平和革命ではない・・・など、面白い話題がいくつも盛り込まれてはいます。
 
国旗・国歌、日の丸や君が代に伝統を感じる人間にも訝しさを覚えると言っています。あんなもの東京が首都になってからうかびあがった新出来の象徴にすぎず、伝統もくそもない、と締めくくられています。
 
やはり井上氏も立派な「京都人」!(^^)!

2015年1月24日 (土)

浅田次郎著「終わらざる夏」

浅田次郎著【終わらざる夏(文庫版:上,中,下巻)読了。
 

Tile
 
陸上自衛隊出身という異色作家、浅田次郎の著作はギャンブルもの以外は殆ど読んでいます。
興味深い題材、読みやすい文体、人情味あふれる(あふれすぎるので"浅田節"とよく言われますが)作風に惹かれるからです。
 

【終わらざる夏】は、「戦争の体験者がいなくなってしまう前に、この小説を書いて世に出したかった」と著者が述べているように、日本人があまり知らない、終戦直後の千島列島・占守島(しゅむしゅとう)での旧日本軍とソ連赤軍との戦いを軸に描いたフィクション。

Photo

 
戦争ものとはいっても、直接的な戦闘シーンはとことん排除され、その過程で理不尽な戦争に取り込まれてゆく一般庶民の運命を描いています。特に、主人公が戦争が終わったら出版しようと訳出していたヘンリー・ミラーの『セクサス』の抄訳をラストに示すことで、その悲劇性が一層高められ、涙なしでは読めません・・・
 
カムイ・ウン・クレ」という言葉がしばしば出てきます。
アイヌ語で「神われらを造りたもう」という意味で、それを私たちはもっと自覚するべきです。

2015年1月16日 (金)

村上海賊の娘

和田竜著【村上海賊の娘】(上下巻)読了。

 
Tile
 
和田竜は「のぼうの城」の著者。吉川英治文学新人賞、2014年本屋大賞受賞。
 
村上海賊の娘・景(きょう:架空の人物)を主人公にした、1576年の毛利方と織田方の「第一次木津川の戦い」の模様を描いた小説で、まるで劇画調の展開は映画にしても見ごたえがあるでしょう。
 
上下巻で約1000頁ありますが、あっという間に読んでしまいました。
 
私は小説を読む時は、映画にしたら配役を誰にするかを考えながら読む事が多いのですが、主人公の「景」は "杏" しかいないでしょう。とすると父親の「村上武吉」は "渡辺謙" 。敵役の大男「真鍋七五三兵衛」は "阿部寛" 。とぼけた泉州侍は "鶴瓶"・・・面白そうな映画になること間違えなしです。
 
この本は図書館で予約してから7か月後に借りられました。現在はなんと975人待ちになっています。

2014年11月 5日 (水)

原発ホワイトアウト

今更でお恥ずかしいですが、
現役キャリア官僚が匿名で書いた内部告発小説【原発ホワイトアウト】読了。
 
一年前に図書館に予約してやっと借りられました。
 
政・官・財が密接に結びつく原子力ムラの実態を暴露した衝撃作です。
 
Photo
 
悪者にされがちな官僚ですが、中には若杉氏のような人もいる。
法に触れない範囲で細心の注意を払って書いたといいますが、それでも、ある勢力から狙われるのではないかと脅威を感じているそうで、秘密保護法が施行されれば、間違いなく若杉氏のような官僚は出てこなくなるでしょう。その先に国民の不幸が待っているような気がします。
 
フクシマの事故が風化し、「安全神話の復活」も怖いですね。
経済成長よりもっと大事なものがあるのですが。

2014年11月 2日 (日)

坊ちゃんの時代

坊ちゃんの時代』(関川夏央、谷口ジロー共著)全5巻読了
 

Tile  

『坊っちゃん』は、文明開化という大きな時代の流れに付いて行けなかった者の悲劇だとする関川独自の発想を基に、漱石を中心とした明治の文学者たちや世相を描いた作品。全5部構成。
第2回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作品。

第一部 「坊っちゃん」の時代:
 漱石の『坊っちゃん』が完成するまでの経緯と当時の世相。
第二部 「秋の舞姫」:
 二葉亭と鴎外とが知り合うきっかけとなった舞姫事件。
第三部「 かの蒼空に」:
 「明るく無責任で享楽的」な啄木像。
第四部「 明治流星雨」:
 近代日本の大きな曲がり角となった大逆事件。
第五部「 不機嫌亭漱石」:
 漱石の「修善寺の大患」を中心に明治の最末期を描く。
 
マンガと侮るなかれ。明治という時代と明治人の苦悩と葛藤を活き活きと描写しています。絶対の自信を持ってお勧めできるマンガです。

2014年7月16日 (水)

HHhH

HHhH プラハ、1942年
ローラン・ビネ著
 

 
Hhh1942_2
 
2010年ゴンクール賞最優秀新人賞受賞作
2014年本屋大賞 翻訳小説部門第1位
 
決して"H"な本ではありません。
 
フランス語の本ですが、原題は Himmlers Hirn heiβt Heydrich 
というドイツ語の頭文字 HHhH からきています。
 
和訳すると「ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる」。
 
ナチにおけるユダヤ人大量虐殺の首謀者ハイドリヒ。
ヒムラーの右腕として〈金髪の野獣〉と怖れられた彼を暗殺すべく、ナチスドイツ保護領下のチェコ・プラハに送り込まれた二人の青年とハイドリヒの運命やいかに。
 
これだけだと、はらはらドキドキのスパイものと思ってしまいますが、さにあらず。
 
著者は、
「事実としてわかることだけを書く」という課題を課し、
「自分が調べながら書いている様子をそのまま書いていく」 つまり、「小説を書く経過を書く小説」という一風変わった手法で書かれています。
 
257の節に細かく分かれ、自分が思っている部分と、小説の部分が交互に書かれているという凝りよう。書いている自分と物語っている「暗殺事件」の時間軸が交ざり合っている部分もあります。
 
ナチスドイツというまだ「歴史」に成り切っていない部分を生々しく書いているのも、この手法が成功している一因ではないでしょうか。
 
久しぶりに人に紹介したい本に巡り合えました。
歴史好き&読書好きの方には自信を持ってお勧めします。
 
いやあ、読書っていいですね ← 似たことを言っていた映画解説者がいましたが・・

2014年7月 2日 (水)

2014年前半に読んだ主な本

2014年も半分が終わりました。


写真は2014年前半に読んだ主な本。
 
2014
 
現在26冊読破。
単行本(文庫本)を年に52冊読む(週一冊)という在職中からの目標は達成できそうです。
殆どが図書館での借り物なので、本棚の本が増えないのが寂しいですが・・・
 
浅田次郎と宮部みゆき(エスパーものを除く)の小説はほとんど読んでいます。
 
「ペテロの葬列」:詰め込み過ぎでちょっと冗長。
 
「黒書院の六兵衛」:江戸城明渡決定直後のドタバタ。題材が新鮮。
 
「一路」:参勤交代を取り仕切ることになった若侍。浅田節全開。
  
「帰ってきたヒトラー」:ヒトラーが現代ドイツにタイムスリップ。
 
「死の泉」:幻想小説。皆川博子は初めて読みますが、手強い!
 
「サン・ミケーレ物語」:カプリ島に行くので読みましたが、カプリ島の描写が少なく、期待倒れ。
 
"本棚を見れば、持ち主の人間性がわかる" と言われていますが、さて、私の人間性は?(笑)

2014年3月12日 (水)

光圀伝

冲方丁(著)【光圀伝】読了。

Photo

冲方丁(うぶかた とう)は一昨年に映画化された「天地明察」の著者。751頁の大作だがあっという間に読破。いやあ面白かった。

水戸黄門として知られる徳川光圀の生涯だが、単なる偉人伝ではない。ひたすら義を求め、苦しみ、迷い、多くの人の死を直視しながら新しい時代を作ろうとする物語。

冲方丁は初めて読むが、余計な歴史解説が無いかわりに、今眼の前に生きているかのような緊迫した躍動感にあふれている文体である。

水戸光圀というと水戸黄門漫遊記(黄門とは中納言の別称)、「大日本史」の編纂、家康の孫、ということくらいしか知らなかったが、その認識が一変した。

 
歴史小説がお好きな人には絶対の自信を持ってお勧めしたい。
 
次は【天地明察】を図書館に予約中。
 
PS.
水戸商工会議所が中心になり、NHKに対して大河ドラマ化の検討を申請しているようです。

2014年1月 8日 (水)

インフェルノ

ダン・ブラウンの最新作『インフェルノ』を読了。

Photo

今作はフィレンツェとヴェネツィアが舞台。
両地とも行ったことがあるので、まるで実際に現地を観光しているようで楽しかったです。

前作の『ダヴィンチコード』や『天使と悪魔』に比べると、宗教色も暗号解読色も殺人事件色も活劇度も薄く、観光ミステリーという趣が強いです。といっても前作も観光ミステリーですが・・・

ダンテの『神曲』<地獄篇>が暗号のキーになっているので、手軽な解説書(謎と暗号で読み解くダンテ『神曲』)も読んでみました。『神曲』はなじみが薄かったのですが、少しは分かった気が・・・

映画(トム・ハンクス主演)は2015年12月の公開が決まっています。

第三作の『ロスト・シンボル』はまだ読んでいないので、これから読む予定です。

PS.
大昔、「タワーリング・インフェルノ」 というパニック映画がありましたが、
当時はインフェルノ=地獄、と言う事を知りませんでした・・・

2013年12月22日 (日)

最後の晩餐の真実

海外旅行では主にヨーロッパに行っているので、キリスト教の知識があるのとないのとでは大違い。ということで、キリスト教のにわか勉強中です。


先日読了した本(図書館で借りました)を一冊紹介します。
 
Photo  

最後の晩餐の真実
原題 『The MYSTERY of THE LAST SUPPER』
コリン・J・ハンフリーズ 著
黒川由美 翻訳
太田出版
発行年2013-07-24
 

最後の晩餐といっても、レオナルドの絵のことではありません。実際のイエスの「最後の晩餐」にまつわる謎を究明するノン・フィクションものです。
「ダ・ヴィンチ・コード」のような内容を期待していると、完全に裏切られます。

イエスが歴史上、最も著名な偉人の一人なのに没年が確定されていないことに疑問をもった著者が、それを確定するために、「最後の晩餐」は西暦何年の何月何日だったのか、イエスの最後の週に何が起きたのかを特定する過程を描いています。

自身が物理学者でもある著者が知人の天文学者に依頼し、古代の暦を再現し、確実な曜日や日付などと照らし合わせるとともに、イエスの裁判や磔刑前後の状況に関しては、ユダヤ教の律法と整合性を持つように解釈していきます。

この本では、磔刑が西暦3■年4月3日(金)、最後の晩餐が同4月1日と特定されていますが、結論よりもその解明経過が上質な推理小説を読んでいるようで、知的好奇心を満足させてくれます。聖書学者の反応がどうなのか気になりますが、キリスト教徒ではないので知ったことではありませんわーい(嬉しい顔) 

解明経過ではいろいろな暦が出てきますが、一日を日没から始める暦や、日の出から始める暦、月の始まりをいつにするか、年の始まりをいつにするかなど、似て非なる暦がたくさんあり、それがいつ頃どの民族、どの地域で使われていたのかなど興味深いことが満載でした。

各章毎にわかりやすい「まとめ」が記載されているので、素人でも分かりやすい内容になっています。

キリスト教、天文(暦)、推理小説、この3つに興味がある方には最高の読み物ではないでしょうか。これぞ三位一体!
フォト
無料ブログはココログ